専業主婦に憧れて

退職後の時間潰し日記

そりゃないぜbaby

もう何十年も前、一つ年下の近所の女性が亡くなった。

特別仲が良かったわけではないが、小中学校や習い事、部活も一緒だった。

小さくて可愛らしいその子は、中学の途中までごくごく普通の見た目だったが、急にぐれ始めてド派手に豹変し、学校の中でも目立つようになった。

中学卒業後は疎遠だったが、母親同士がご近所付合いをしているので、20代の頃その子が結婚したと聞いた。とあるバンドの追っかけをしていて、メンバーの一人と結婚したらしい。

音楽ファンだった私はそれを聞いてめちゃめちゃ羨ましかった。好きなバンドメンバーと結婚できるなんて、そんな夢みたいなことがあるの~!信じらんない。やっぱ可愛いって得よねー。

なんて下世話なことを考えながら、他人事なので気に留めていなかったが、その後母から、彼女が繰り返す夫の浮気で悩み、何回か自傷行為をしたと聞いた。

ステレオタイプな話、と聞き流していたら、ある日遂に亡くなってしまった。

噓でしょ、、、

出先のバンドマン夫にこれから自殺すると予告し、夫は駆けつけたが間に合わなかったそうだ。

そんな形で大切な娘を失った家族は当然怒り、遺骨を引き取ってバンドマン親族とは縁を切った。

そうして短い人生を終えてしまったあの子。不謹慎な言い方だが、ドラマのような悲劇に衝撃を受けた。

 

それから何十年も経つ間に、私は留学や結婚で実家を離れていたが、ここ数年母の世話でまた実家通いをする中で、彼女のお母さんをお見かけした。うちの母とはご近所さんの老婆未亡人同士で(言い方すみません)助け合ったり出かけたりする仲間なのだ。

勿論あの頃と違い、すっかり白髪になっていたおばさん。あれから何十年、悲しみを乗り越えて、穏やかに過ごしてらっしゃる今の姿がやるせなく、感慨深かった。

 

先日、お盆の相談から何気なく母がした話に、腹が立った。

その彼女のバンドマン夫は、未だに毎年お盆になると、仏壇に線香を上げに来るのだと。派手な髪形で。

塩撒いて追っ払ってやればいいのに!べらんめぇ!と江戸っ子ばりに息巻く私に、そうもいかないのよ、かなり遠方の地方から来るから拒めないんだって。と母。

おばさんは、来る度に思い出して辛いからもう来ないでくれと伝えたこともあるという。それでも毎年来て迷惑しているというのだ。

 

娘を失った母の気持ちを想像することができないのか?

あなたも反省して罪滅ぼしのつもりだろうけど、それって自己満足のエゴだよね。

娘を亡くした生地獄を味わい、それでも生きていくために、受けた傷を心の奥底に閉じ込めて前を向いてきたんだよ。
あなたが来ることでその傷がえぐられてるって気づかないの?

悲しみは一生消えないけど、悲しみとあえて向き合いたくないし、もう忘れたいのよ。私が言うのもなんだけど、そっとしておいてあげてよ。

あなたにも言い分はあるでしょう。軽率な行動が悲劇を招いて辛かったかもしれない。でも、自業自得だから。

娘を苦しめたように80過ぎのおばあさんをこれ以上苦しめるのやめてあげて。

 

愛を歌うバンドマン。

そこに愛はあるんか。ほんまに。

 

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