~複数親知らずを抜くため入院した記録⑤~
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bittersweetfeeling.hatenablog.com
朝5時過ぎ 目が覚め尿意を感じる。
一度付き添ってもらったからもう一人で行っていいはずだが、吐かずに行けるのかめちゃくちゃ不安。でもやってみるしかない。なんたって今日退院予定なんだし。頑張れ自分。
思い切って起き上がってみると、あれ?意外と大丈夫。これなら行けそう。しかし三種の神器は欠かせない。オケを口元に箱ティッシュと点滴スタンドを掴みヨロヨロとトイレへ。
無事に戻ってこれた。やったー山は超えたらしい。わーい。
6時 起床時間
看護師さんが来たので、トイレに一人で行けました!と報告。看護師さんも、昨日より顔色がいいです!と喜んでくれた。水分摂って下さいねと言われたので二口程度水を飲んだ。
ちょっと経つと、あれれ、なんかまたちょっとキモいような…
気のせいであれ。
7時 朝食が運ばれてきた。
お腹はすいてる。よし、食べよう。
横のスイッチでベッドの背を立てていくと、再び気持ち悪さが。そんなはずない、山は超えたはずだ。でも体は正直で垂直にしたら吐きそうだったのでやや斜めの角度に戻す。
ダメダメ、なんとかここを乗り超えなくては。自分に鞭を打つ。
斜めベッドによりかかったまま牛乳パックを掴み無理矢理何口か飲んだ。他のおかずは見るだけでムカムカする。でも食べなきゃ。お椀の味噌汁をちょっとすすった。割と美味しいのに気色悪い。他は手つかずだけどこれ以上無理そう。
一旦食事を諦めベッドにもたれかかり固まっていると、回診の先生が来た。
無理しなくていいけど、口から食べて体が栄養吸収しないと帰せない、と全く予期しなかった言葉に焦る。点滴の栄養だけだと不十分だそう。
「とりあえずこのあと診察室で判断するから、歩けなければ車椅子使って来て」
雲行きが怪しい。そういえば夫にラインしてない。携帯を見ると「退院できそう?」ってちょっと前にラインがきてる。当初の退院予定は今日なので9時半には迎えに来るのだ。車がなく公共交通機関だから朝早くから支度してるらしい。携帯がめまいを引き起こしがちなので短く打つ。
「下手するとだめかも」
8時半 診察時間
先生が用意させた車椅子を看護師さんが運んできたが、これが吐き気を助長してしまう。乗ってバックされたらすぐにまたリバース。
麻酔のせいなのか、メニエールの影響なのか、三半規管が狂って車酔い状態なのか、もうわからない。
酔うから自分で歩きますと言っても、看護師さんは危ないから座ってと言う。仕方なくオケと箱ティッシュを手に車椅子に乗るが、ちょっと進んだらまたリバース。情けない。背中をさすってくれる看護師さんの手の温もりが身に沁みる。
先生の言った通り栄養吸収できてない。さっきの牛乳と味噌汁を戻しちゃった。ドス黒い血は止まったみたい。
親切心なのに、私にとっては拷問みたいな車椅子で診察室前に着いた。口元にオケを当てながら車椅子に座り衰弱した私を見て、先生は診察するまでもなく仰った。
「退院を延ばしましょう。食べれない分は点滴追加ね」
……悲しみ。
病室へ戻りながら、抜歯ごときでまさかの退院延期に落胆する私を看護師さんが慰める。
まぁ今日は寒いから暖かい部屋でもう一日ゆっくりして体調戻しましょう、ねっ。(優しい)
帰りたかった。家でゆっくりしたかった。また眠れぬ一夜を過ごすのかと思うと憂鬱でしかなかった。
でも、確かに退院と言われても、帰れる気がしなかった。きっとタクシーの中でリバースしてしまう、と思う自分もいた。
ベッドに戻ると退院延期になったことを夫にライン。確か明日も休みだから来てもらおう。
「きょうなしで 明日きて」
気持ち悪いので電報みたいな文だけ打って携帯通知オフに。
昨夜から私を世話してくれた看護師さんが夜勤明けで帰る前に、私のために色々ベッド周りを整えてくれた。
オケに入れるゲロ袋を取り換えやすいように何枚もセットしたり、私がゴミを捨てやすいようにベッド脇にゴミ袋をセロテープで貼ってくれたり、まだ片付けられていない残した朝食の中から、ほうじ茶だけを「あとで飲めたら」とテーブルに置いてくれたり。のちのち水よりお茶が飲みやすくてとても助かった。
「なんでも山下さんの過ごしやすいようにして下さい。遠慮なくナースコール押して下さいね」
と気遣いの言葉を残して天使は去っていった。あんなにゲロ吐いたり面倒かけたのに嫌な顔もせず。本当にありがとうございました。
【もうちょい続く】